キャッシュフローの概要と利益との違いを理解していただいたところで、 「なぜキャッシュフローが大事なのか?」 について説明したいと思います。
もう一度、前章の具体例(B)を見てみましょう。
経営を安定させる「キャッシュフロー経営」が注目される理由
株式公開企業に連結キャッシュフロー計算書が義務づけられたのが2000年3月期からで、当初フリーキャッシュフロー(以下FCF)の重要性が言われました。 FCFは営業キャッシュフロー(以下営業CF)マイナス投資キャッシュフロー(以下投資CF)ですから、FCFをプラスにするためには、営業CFの範囲で投資を行なわなければならなくなります。そうすると企業は投資を抑制したりしますが、これを継続すると企業の競争力がなくなってしまいます。 こうしたことから、キャッシュフローは単年度で見るのではなく、複数年度の期間で評価するべきだとなりました。 営業CFは、稼ぐ力を示していますから、売上高に対して一定程度の額・割合が必要です。営業CF÷売上高を営業CFマージンといいますが、メーカーのような競争力維持のための投資が必要な企業では、10%以上が目安とされます。営業CFマージンの推移を見ると、自社の稼ぐ力の変化が掴めるわけです。 この稼いだ営業CFから投資を行いますが、投資を営業CFの範囲内で抑えていると、だんだんお金(キャッシュ)が貯まってきます。このお金で借入金の返済や社債の償還を行うことができます。キャシュフローの期末残高が借入金の額を超えると、いわゆる実質無借金経営となります。 90年代2000年代の日本企業は借金まみれでしたが、こうしたキャッシュフロー経営の導入で借入金を返済し、実質無借金経営の企業の比率が高くなりました。このため、コロナ禍でも自前の資金で持ちこたえられるところが多く、企業の倒産数は少なくて済みました。 企業買収や大規模投資が必要な場合には、営業CFの枠を超えて投資を行う必要が出てきます。そして自前の資金が不足すれば、借入金を増やして投資に回します。 企業は赤字では倒産しませんが、支払うべきキャッシュがなくなると倒産してしまいます。ですから手元で自由になるキャッシュがどれだけあるか、常にウォッチしておく必要があります。 下表は、ある企業の6年分のCFの推移をグラフにしたものですが、投資に積極的な年と借入金返済に積極的な年とがあり、複数年で見ることで、キャッシュの動きがよく分かります。 企業の財務を健全に保つには、一定程度のキャッシュが必要ですが、競争力を保つには、積極的な投資も必要なのです。 ポイント キャッシュフロー管理は、財務の安全性と企業の競争力維持のバランスを取る
キャッシュ・フローとは
現金がなければ会社の営業活動はできませんが、取引上では、よく売掛金や買掛金が生じます。商品を買った、売ったという取引はあるのですが、代金はまとめて月末に振り込みをするといった、いわゆるツケの状態です。
商品を取引先に売った場合、損益計算書では「売上」にあがりますが、現金は会社に入っていないというずれが生じる訳です。
このずれがどれくらい生じているかを把握する書類を、キャッシュ・フロー計算書と呼びます。
キャッシュ・フローと貸借対照表
貸借対照表は、決算日における会社の財政状態を表しています。
財政状態とは、どのように現金を工面して、どのように使ったかということです。
工面する方法としては、株主からの資本のほか、銀行などから借りた、もしくは本業によって稼いだということになります。使ったということは、何か資産を買った、もしくは預貯金になります。
貸借対照表では、工面した現金を左側、使った現金を右側に表記しますので、最終的に左右の数値は同額になります。
一方、キャッシュ・フローについては、同じ現金でもキャッシュ・フロー計算書により、各項目に分けて、どんな原因で増えて(流入して)、どんな原因で減って(流出して)いるかを表しています。
損益計算書との違い
財務三表にはもう一つ、損益計算書があります。
損益計算書は、一定会計期間の会社の経営成績を表しています。
売上高に対して、どれくらい費用がかかったか、それを差し引いて現在の利益がわかる訳です。これを「当期純利益」「粗利」などと呼ぶこともあります。
前述の通り、会社の取引には売掛金や買掛金があります。
損益計算書はツケも含めた会社の経営成績を表しているのに対して、キャッシュ・フローはこれらのツケを反映せず、現金の流れのみを表している所に違いがあります
キャッシュフローとは?キャッシュフローが大事な理由や計算方法、見方などまるっと解説します!
キャッシュフローの概要と利益との違いを理解していただいたところで、 「なぜキャッシュフローが大事なのか?」 について説明したいと思います。
もう一度、前章の具体例(B)を見てみましょう。
<利益> 200万円−100万円= 100万円
<キャッシュフロー>▲100万円
利益が出ていても倒産することがある
つまり利益ばかりに目を取られ、キャッシュフローの管理をおろそかにしてしまうと、 「いつの間にか倒産の危機!」なんてことになりかねない のです!
特に起業時は多くのキャッシュを投資に回していたり、そもそも資金的に余裕がなかったりで、この事態に陥りやすいです。 「起業時はキャッシュフローが大事」 キャッシュフローとは といわれるゆえんです。
キャッシュフローの計算方法・見方
- 月間のキャッシュフロー = 当月末キャッシュ − 前月末キャッシュ
仕入れの増加や設備投資などでもキャッシュフローはマイナスになるため、お金が減ることは必ずしも悪いことではありませんが、上述の通り 「キャッシュが無くなり支払いができなくなると倒産する」 ことになりますので、よくよく注意するようにしましょう。
キャッシュフロー計算書 | 会計期間中のキャッシュの増減を数値で示した計算書類。 過去のキャッシュの流れを可視化するのが目的 。貸借対照表(B/S)、損益計算書(P/L)と合わせて「財務三表」と呼んだりする。 |
---|---|
資金繰り表 | 一定期間のキャッシュの流れを把握するための資料。過去のキャッシュフローを把握する 「実績の資金繰り表」 と、これから(将来)を見る キャッシュフローとは 「計画の資金繰り表」 の二つがある。 |
お金管理の第一歩は「会計ソフト」から!
ここまでキャッシュフローの基本をざっと説明してきましたが、特に経営初心者の方にお伝えしたいのは 「日々のお金の流れをチェックする習慣をつけよう」 ということです。
初めての会計ソフトは定番の「弥生会計」がおすすめ
数ある会計ソフトの中でお勧めしたいのが、22年連続で売上No.1を記録し、会計ソフトメーカー別販売本数シェアでも一位の 「弥生会計」 です。
弥生会計が人気の理由、それは 圧倒的な使いやすさ にあります。「借方・貸方」といった会計知識のない方でも使いやすい画面設計はもちろん、電話・メール・チャットによる徹底したサポート体制など、初めてでも簡単&安心に使い続けられる仕様になっています。
なお小規模事業向けのラインナップには、記帳のしやすさに重点を置き、初めての会計ソフトとしてお勧めの クラウド版「弥生会計 オンライン」 と、資金繰り表の作成など、より高度な資金繰り管理ができる デスクトップ版「弥生会計」 の二つがあります。やりたいことに合わせて選ぶとなお良いでしょう。
「弥生会計 オンライン」ではキャンペーンを開催中!
「弥生×創業手帳 キャンペーン」では、1年以内に会社設立される or2017年1月以降に会社設立された方を対象に、 「弥生会計 オンライン」 ベーシックプラン(電話・チャット等のサポート付プラン)の 通常30,000円(税抜)が2年間無料に。
経営を安定させる「キャッシュフロー経営」が注目される理由
株式公開企業に連結キャッシュフロー計算書が義務づけられたのが2000年3月期からで、当初フリーキャッシュフロー(以下FCF)の重要性が言われました。 FCFは営業キャッシュフロー(以下営業CF)マイナス投資キャッシュフロー(以下投資CF)ですから、FCFをプラスにするためには、営業CFの範囲で投資を行なわなければならなくなります。そうすると企業は投資を抑制したりしますが、これを継続すると企業の競争力がなくなってしまいます。 こうしたことから、キャッシュフローは単年度で見るのではなく、複数年度の期間で評価するべきだとなりました。 営業CFは、稼ぐ力を示していますから、売上高に対して一定程度の額・割合が必要です。営業CF÷売上高を営業CFマージンといいますが、メーカーのような競争力維持のための投資が必要な企業では、10%以上が目安とされます。営業CFマージンの推移を見ると、自社の稼ぐ力の変化が掴めるわけです。 この稼いだ営業CFから投資を行いますが、投資を営業CFの範囲内で抑えていると、だんだんお金(キャッシュ)が貯まってきます。このお金で借入金の返済や社債の償還を行うことができます。キャシュフローの期末残高が借入金の額を超えると、いわゆる実質無借金経営となります。 90年代2000年代の日本企業は借金まみれでしたが、こうしたキャッシュフロー経営の導入で借入金を返済し、実質無借金経営の企業の比率が高くなりました。このため、コロナ禍でも自前の資金で持ちこたえられるところが多く、企業の倒産数は少なくて済みました。 企業買収や大規模投資が必要な場合には、営業CFの枠を超えて投資を行う必要が出てきます。そして自前の資金が不足すれば、借入金を増やして投資に回します。 企業は赤字では倒産しませんが、支払うべきキャッシュがなくなると倒産してしまいます。ですから手元で自由になるキャッシュがどれだけあるか、常にウォッチしておく必要があります。 下表は、ある企業の6年分のCFの推移をグラフにしたものですが、投資に積極的な年と借入金返済に積極的な年とがあり、複数年で見ることで、キャッシュの動きがよく分かります。 企業の財務を健全に保つには、一定程度のキャッシュが必要ですが、競争力を保つには、積極的な投資も必要なのです。 ポイント キャッシュフローとは キャッシュフロー管理は、財務の安全性と企業の競争力維持のバランスを取る
キャッシュフロー(CF)とは?PL/BSとの関係や会社の状態を読み解く方法を紹介
キャッシュフローを作成する目的は次の3つです。
- 経営者が経営戦略を立てる
- 利害関係者に経営状態を開示する
- 営業部長などの管理者が、時間差で異なる利益や現金・預金を把握する
キャッシュフロー計算書の種類
「キャッシュフロー = キャッシュイン(入ってきた現金) – キャッシュアウト(出ていった現金)」というシンプルな式で表すことも可能ですが、企業では営業活動・投資活動・財務活動の3つのカテゴリーごとにお金の流れを書き出します。
営業活動によるキャッシュフロー
会社が生業としている本業で生じた利益を指し、住宅会社であれば住まいを販売したことで得た利益が営業活動によるキャッシュフローに該当します。
少し細かくなりますが、営業活動によるキャッシュフローは、さらに次の5つに分類されます。
- 商品等販売による現金収入
- 商品等仕入による現金支出
- 人件費の現金支出分
- 経費のうち現金支出分 キャッシュフローとは
- 投資活動・財務活動以外
投資活動によるキャッシュフロー
投資活動によるキャッシュフローは、主にどのくらいの予算を設備投資に充てているかを表す諸表として用いられます。
また、営業活動によるキャッシュフローと同様に次の8つに分類されます。
- 定期預金の預入による支出
- 定期預金の払戻による収入
- 固定資産の取得による支出
- 固定資産の売却による収入
- 投資有価証券の取得による支出
- 投資有価証券の売却による収入
- 貸付による支出
- 貸付金の回収による収入
財務活動によるキャッシュフロー
財務活動という言葉からも分かる通り、資金調達の状態を表す諸表として用いられます。
また、財務活動によるキャッシュ・フローも、次の6つに分類されます。
- 借入による収入
- 借入金の返済
- 新株式発行による収入
- 自己株式取得による支出
- 自己株式の売却による収入
- 配当金の支払い
フリーキャッシュフロー
営業活動によるキャッシュフロー − 投資活動によるキャッシュフロー = フリーキャッシュフロー
キャッシュフローと損益計算書・貸借対照表の関係
キャッシュフローと損益計算書、貸借対照表が財務三表と呼ばれることからも分かる通り、経営状態を理解するためにはすべてを連動させることが重要です。
まず、損益計算書の当期純利益は、貸借対照表の繰越利益剰余金にストックされ、投資や財務基盤を強化するため予算として確保されます。
キャッシュフローの作成方法
直接法での記載
間接法での記載
間接法は、現金の動きだけに着目したキャッシュフローの作り方です。
具体的には損益計算書の税金等調整前当期純利益に対する、非資金損益項目、投資活動や財務活動の損益項目、営業活動に関する資産・負債の増減を把握していれば作成可能です。
コメント