(管理人)
ヘッジ会計の仕訳方法(繰延ヘッジと時価ヘッジ)
【ヘッジ会計の必要性】
ヘッジ手段であるデリバティブ取引については、原則的な処理方法によれば時価評価され損益が認識されることとなるが、ヘッジ対象の資産に係る相場変動等が損益に反映されない場合には、両者の損益が期間的に合理的に対応しなくなり、ヘッジ対象の相場変動等による損失の可能性がヘッジ手段によってカバーされているという経済的実態が財務諸表に反映されないこととなる。このため、 ヘッジ対象及びヘッジ手段に係る損益を同一の会計期間に認識 し、ヘッジの効果を財務諸表に反映させるヘッジ会計が必要と考えられる。
出典:金融商品会計基準96項
ヘッジ会計の仕訳方法
ヘッジ会計の意義とその必要性について理解した上で、肝心の具体的な仕訳方法ですが、金融商品会計基準では、繰延ヘッジと時価ヘッジという2つの方法が規定されています。このうち、 繰延ヘッジが原則法 であり、 時価ヘッジが例外法 になります。
繰延ヘッジ(原則法)
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
繰延税金資産※ (資産) | 40 | デリバティブ (負債:正味の債務) | 100 |
繰延ヘッジ損益 (純資産の部) | 60 |
借方 | 金額 | デリバティブとヘッジ会計貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
デリバティブ (資産:正味の債権) | 100 | 繰延税金負債※ (負債の部) | 40 |
繰延ヘッジ損益 (純資産の部) | 60 |
※実効税率は40%として計算している。
仕訳の出典:荻茂生、長谷川義孝「ヘッジ取引の会計と税務 第5版」(2014年6月,デリバティブとヘッジ会計 中央経済社)133項図表
時価ヘッジ(例外法)
表にも書いていますが、時価ヘッジでは、ヘッジ対象の時価を貸借対照表価額とすることが認められているものに限定され、金融商品会計基準の規定との関係上、 現時点ではその他有価証券のみ であると解釈されます(金融商品会計実務指針185項)
金利スワップとヘッジ会計を理解する①(キャッシュフローヘッジ)
金利スワップとヘッジ会計を理解する②(公正価値ヘッジ) 下記の記事で金利スワップに関するキャッシュ・フローヘッジについて解説をしました。 https://cpa-noborikawa.net/swap-cashflowhedge/ 内容は、金利スワップを用いて.
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登川雄太
(管理人)
キャッシュ・フローヘッジの取引
会社は 変動金利で資金を借り入れるケース があります。この場合、市場金利が下がれば金利負担(支払利息)は減りますが、逆に市場金利が上がると金利負担も上がります。
金利が上がるか下がるかは将来のことなのでわかりません。ただどちらに転ぶにせよ、会社からすると 将来支払う金額が変動する(不確実である) というのは資金管理上リスクがあります。
そこで金利スワップです。具体的には、 変動金利を受け取る&固定金利を支払う契約 です。この契約を結ぶことで変動金利の借入金を、実質的に固定金利の借入金とすることができます。
ボブ(勉強中)
キャッシュ・フローヘッジの仕訳
ボブ(勉強中)
繰延ヘッジ処理と特例処理
それはヘッジ手段である 金利スワップ契約自体 です。
金利スワップ自体はデリバティブ取引です。 デリバティブ取引は「期末に時価評価&評価差額は損益(P/L計上)」が原則 です。
しかし今回の金利スワップについてその会計処理は適用しません。なぜなら、ヘッジ対象である 借入金から時価評価損益は計上されない からです。
よって、 スワップの評価差額はB/Sの純資産の部に直入 をします。
これがヘッジ会計の適用で、会計処理名を 繰延ヘッジ といいます。
よって、 スワップをそもそも時価評価しないという処理 も認められています。
この処理名を 特例処理 といいます。
おじさん(先生)
今回のまとめ
金利スワップとヘッジ会計を理解する②(公正価値ヘッジ) 下記の記事で金利スワップに関するキャッシュ・フローヘッジについて解説をしました。 https://cpa-noborikawa.net/swap-cashflowhedge/ 内容は、金利スワップを用いて.
おまけ
おじさん(先生)
ボブ(勉強中)
おじさん(先生)
それなら、会計ノーツの公式本がおすすめじゃ。
その名も「世界一やさしい会計の教科書」じゃ!
ボブ(勉強中)
BS上の「デリバティブ」と「棚卸資産」はどの様に表示されているのか?
基本編
イメージはできているけど詳しい分類、表示のルールについて改めて確認してみると発見があるかもしれません。
デリバティブ
デリバティブの評価
デリバティブ取引(先物取引、オプション取引、スワップ取引など)によって生じる正味の債権及び債務は、時価をもって貸借対照表価額とし、原則として、評価差額はヘッジに係るものを除き、当期の損益として処理します。
ヘッジ会計
ヘッジ取引
ヘッジ会計の意義
ヘッジ対象
- 当該資産または負債に係る相場変動等が評価に反映されないもの
- 相場変動等が評価に反映されているが評価差額が損益として処理されていないもの
- 当該資産または、負債に係るキャッシュ・フローが固定されその変動が回避されるものである
- 主要な取引条件が合理的に予測可能であり、かつ、実行される可能性が極めて高い予定取引により、発生が見込まれる資産または負債も含まれる
ヘッジ会計の方法
棚卸資産の種類
① | 通常の営業過程において販売するために保有する財貨または用役 | → | 商品・製品 |
② | 販売を目的として現に製造中の財貨または用役 | → | 仕掛品・半製品 |
③ | 販売目的の財貨または用役を生産するために短期間に消費されるべき財貨 | → | 原材料品 |
④ | 販売活動及び一般管理活動において短期間に消費されるべき財貨 | → | 事務用消耗品などの貯蔵品 |
完成品 | 商品:他社から仕入れた財 |
製品:自社で生産した財 | |
未完成品 | 仕掛品:製造途中にあるもので、その状態では販売不可能な財 |
半製品:製造途中にあるもので、その状態で販売可能な財 |
棚卸資産の取得原価
取得原価=購入代価+付随費用 |
棚卸資産の原価配分
(前期繰越数量+当期受入数量)― デリバティブとヘッジ会計 当期払出数量 = 次期繰越数量 |
(前期繰越数量+当期受入数量)ー次期繰越実地棚卸数量=当期払出数量 |
・先入先出法(First-In, First-Out Method:FIFO)
長所 | 棚卸資産の貸借対照表価額は、その資産の期末の時価に近い価額で評価されることになる |
短所 | 保有損益が売上総利益の中の算入されることになる。 |
・後入先出法(Last-In, First-Out Method:LIFO)
長所 | 保有損益を売上総利益から排除するのに役立つ。 |
短所 | 物価変動時には棚卸資産の貸借対照表価額は、その資産の期末の時価とかけ離れたものになってしまう。 |
長所 | 期末にならなくても平均単価を把握することができる。 |
短所 | 払出の都度、平均単価を算出しなければならないという計算手続上の不便さがある。 |
長所 | 一定期間の平均単価の計算が1回で済み、払出単価を均一にするという効果をもつ。 |
短所 | 払出単価が一定期間後でなければ確定しないという不便さがある。 |
③先入先出法と後入先出法の比較
先入先出法 | 後入先出法 | |
物の流れと原価の流れ | 多くの場合一致する | 多くの場合一致しない |
収益と費用との関係 | 古い単価が費用となり、 新しい収益に対応 | 新しい単価が費用となり、 新しい収益に対応 |
保有損益の取り扱い | 利益計算に混入 | 利益計算から排除 |
棚卸資産価額 | 新しい単価で評価 | 古い単価せ評価 |
棚卸資産の評価
通常の販売目的(販売するための製造目的含む)で保有する棚卸資産は、取得原価をもって貸借対照表価額とし、期末における正味売却価額が取得原価よりも下落している場合には、当該正味売却価額をもって貸借対照表価額とします。これは、収益性の低下による簿価の切下げという考え方に基づくものであり、実質的には期末棚卸資産の評価基準に低価基準を適用したものといえます。なお、取得原価と当該棚卸資産の評価基準売却価額との差額は当期の費用として処理されます。
棚卸資産の時価には、正味売却価額と再調達原価があります。なお、収益性の低下に基づく簿価切下げの判断に当たり原価と比較される時価は、正味売却価額です。ただし、製造業における原材料等のように、再調達原価の方が把握しやすく、それが正味売却価額と歩調を合わせて動くと想定される場合には、継続適用を条件として再調達原価によることができます。
切放法と洗替法のうち、継続適用を条件に棚卸資産の種類ごとに選択適用することができます。また、売価の下落要因を区分把握できる場合には、簿価切下げの要因ごとに選択適用できます。
わかりやすい解説シリーズ「ヘッジ会計」 第4回:ヘッジ会計の適用要件
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【わかりやすく!】金融商品会計について解説②〜ヘッジ会計の処理
会計
ヘッジ会計の考え方
ヘッジ会計適用の要件
また、ヘッジ有効性の判定基準としては、ヘッジ対象の相場変動とヘッジ手段の相場変動による変動額を基礎として判定を行います。具体的には両者の変動額の比率がおおむね80%〜125%までの範囲内であれば、ヘッジ対象とヘッジ手段との間に高い相関関係があると認められます。
ヘッジ会計の原則的な処理(繰延ヘッジ)
為替予約日 2021/3/1 | 決算日 2021/3/31 | 売上日 2021/4/1 | 決済日 2021/5/31 | |
直物為替レート | 115 | 112 | 110 | 105 |
先物為替レート | 110 | 108 | 105 | – |
勘定科目 | 借方 | 勘定科目 | 貸方 | |
決算日 2021/3/31 | 為替予約 | 200 | 繰延ヘッジ損益 | 200 |
決済日 2021/5/31 | 現金預金 繰延ヘッジ損益 | 500 200 | 為替差損益 為替予約 | 500 200 |
繰延ヘッジの例外的処理(時価ヘッジ)
先物契約締結日 2021年3月1日 | 決算日 2021年3月31日 | 決済日 2021年5月31日 | |
現物の有価証券時価 (ヘッジ対象) | 1,000 | 800 | 600 |
先物契約時価 (ヘッジ手段) | – | +200 | +400 |
勘定科目 | 借方 | 勘定科目 | 貸方 | |
決算日 2021/3/31 | その他有価証券評価損益 (PL) | 200 | その他有価証券 | 200 |
翌期首 2021/4/1 | その他有価証券 | 200 | その他有価証券評価損益 (PL) | 200 |
決済日 2021/5/31 | 現金預金 その他有価証券売却損 | 600 400 | その他有価証券 | 1,000 |
勘定科目 | 借方 | 勘定科目 | 貸方 | |
決算日 2021/3/31 | 先物契約 | 200 | 先物契約損益 (PL) | 200 |
決済日 2021/5/31 | 現金預金 先物契約損益 | 400 200 | 先物契約損益 先物契約 | 400 200 |
・ヘッジ有効性の判定基準は、ヘッジ対象・ヘッジ手段の相場変動額の比率がおおむね80%〜125%までの範囲内であること
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